8/31/2008

T社模試

T社模試、自宅受験しました。
今日は諸事情により事例1〜3まで。
事例4はあしたやって送ります。

本当は会場受験のほうが現場の臨場感が味わえていいんだけどね。

【今日の勉強】
T社公開模試 事例1、2、3
Total 4.0H


【今週のまとめ 8/25-8/31】
勉強
中小企業診断士
事例直前演習 6つ
T社公開模試 3つ
Total 14.0H


・下流社会 新たな階層集団の出現 三浦展
・ハイエク 知識社会の自由主義 池田信夫
・人は見た目が9割 竹内一郎
・頭がいい人、悪い人の話し方 樋口裕一
・御社のトヨタ生産方式は、なぜ、うまくいかないのか? ~偽りの「かんばん」~ 若井吉樹
・組織論  桑田耕太郎/田尾雅夫

映画
・どろろ
……塩田明彦の映画ってどうしてこうツメが甘いんだろう。甲冑の武士が出てくるようなシーンは、「乱」とか「天と地と」とかのオマージュでかっこいいのに。中井貴一かっこいい。

【本】 下流社会 新たな階層集団の出現 三浦展

いまさらベストセラー新書 その3

ここ何年か格差社会というのが、本当に格差が広がってるのかという根本的な問いも含めて問題になってますね。この本もそうした格差についての問題やその解決策について書いてあるのかと思いきや、ほとんどのページを統計データの分析に費やしています。格差の問題点や解決策について触れている部分もところどころにあるものの、おまけという感じでさらりと流しているます。

どうしてこんなに分析ばかりにページを費やしているのか疑問に思ったのですが、著者の経歴をみて納得。パルコを出発点として、ずっと市場調査やマーケティングを専門にやってきていた人なんですね。だから、関心の対象が、格差社会の社会的・制度的原因や問題点にあるのではなくて、格差社会でどういった階層が生まれて、その階層ごとにどういう消費行動を起こすのかというマーケティング的な面のようです。格差の存在の是非はこの際棚上げにして、事実として格差が存在している以上、新しく階層化された社会集団の意識や消費行動を分析して、マーケティングにつなげていこうという発想でしょうか。格差社会ではなく、下流社会とわざわざ名付けたのも、格差社会という言葉のもつ社会的政治的イメージを避けて、あくまで分析対象として扱うという意図のもとだと考えれば説明がつくところ。

格差社会をマーケティングを結びつける発想がなかったのでかえって新鮮でした。考えてみれば、消費行動が大きく変わるはずなのだからそれに企業も対応するのは当然と言えば当然なんですが、そこに考えが至っていませんでした。求めていた内容とはちょっと違ったのだけど、こういう視点も大事なんだというところで大変参考になるものがあります。

8/29/2008

【本】 ハイエク 知識社会の自由主義 池田信夫

ハイエクという人の名前はぼんやり聞いたことはあったのですがどんな業績を残したのか全然知りませんでした。アダム・スミスやケインズのように、ミクロ・マクロの初級授業じゃぜんぜん出てこないですからね。

しかし、読んでみるととても面白かった。

普通、経済理論というと、いわゆる資本主義の市場経済重視と、社会主義・共産主義の計画経済という対立軸で語られることが多いと思います。ほとんどの社会主義国家が崩壊した現代では市場経済が正しくて、市場経済効率的な資源配分を実現するという新古典派が主流なわけですね。でも、市場経済重視の新古典派の理論も、社会主義・共産主義の典型的な計画経済も、人間の合理性を前提に置いている点ではどちらも同じ。その合理性を発揮するのが、市場の参加者すべてなのか、一部のエリートなのかという違いでしかない。

それに対して、ハイエクはその合理性の前提自体を疑ったと。前提を疑って、市場や政府が均衡なんていうほとんど計算不可能なところに経済をもっていけるなんて考えを否定した。で、合理的でも、均衡にもっていくこともできない人間ができることは、それぞれがそれぞれの目的にしたがって行動して漸進していける自由を設定することじゃないか、そのためには市場の規制は極力なくして自由な経済活動ができるようにしましょう、と。最終的には新古典派同様市場を重視する姿勢になるんですが、その理由は新古典派とは全然違うところからきているんですね。自由な経済活動によって最適な資源配分を実現するのが目的じゃなくて、市場の参加者それぞれが自由な経済活動できること自体が大事ということかな。新古典派の理論が全体として機能する精緻な機械のイメージなら、ハイエクのはそれぞれが自律的に動いていく細胞のあつまり的な感じでしょうか。

いままで単純に、いわゆる新古典派の市場経済とマルクス経済学の計画経済というぼんやりとした対立軸でしか経済理論を捉えていなかった身としては、経済学に対する見方が一気に変わる本でした。


雨ばかりで

雨ばかりでなかなかジョギングできません。
体がなまってしまいそう。
部屋でストレッチでもしましょう。


【今日の勉強】
○中小企業診断士
T社事例直前演習 6(事例2)
Total 1.75H

1次の知識が必要な問題が若干弱い?すこしテキストの見直しもしておかないと。

8/28/2008

図書館すてき


図書館で予約してた本がどどっと来ました。
もう少し分散すると思ったんだけど。
全部読み切れるかな。

いまさらなのも混じってるけど、しばらくは新書特集です。
いろんな本がただで読めるなんて図書館てほんとに素敵ですよね。




【今日の勉強】
○中小企業診断士
事例直前演習 5(事例1)
Total 1.75H

【本】人は見た目が9割 竹内一郎

いまさらベストセラー新書その2。

タイトルから、外見や振る舞いに対する人の心理とか制度的・社会的効果とかの話を期待してたんですが、劇作家が日々のできごとから得た雑感エッセイですね。

ひとつのテーマがあるわけじゃなくて、話題がいろいろと飛ぶので全体的にまとまりがなくてぼんやり。個々の話題も、こういう人が増えた”印象”がする、それはこういう理由だと”思う”、という印象ベースの話が多くて、やっぱりぼんやり。そういう考え方もあるよねー、くらいにしかなりません。

タイトルのインパクトが強いぶん、中身のぼんやり具合がなおさら気になりました。


それにしても、このタイトル、つかみとして最強ですが、本文でちゃんと種明かししないと知らない人は誤解しないかな(メラビアンの法則といって、実験結果の解釈だけが一人歩きしてしまう典型例として有名です)。


【本】 頭がいい人、悪い人の話し方 樋口裕一

いまさらベストセラー新書その1。

なにかの書評で「頭が悪い人の見本 問題外」と1行だけ書かれてて笑った記憶があります。

読んでみると、頭が悪い人の見本とまでは言わないけど、そう書かれても仕方がないのかなあ。とちょっと納得。

頭の悪い人の例示40個は、ほとんど思いつくまま並べましたってくらいに分類も集約もされてないし、対策やワンポイントもほんと適当すぎでしょ。

そのうえ、この本自体が頭が悪い人の例示に当てはまっちゃってるから、もう。「矛盾に気付かない」とか「ありふれたことした言わない」とか「根拠を言わずに決めつける」とか「少ない情報で決めつける」とか。え、わざと?ってくらい。

目次に書かれた例示40個をざっとみて、「あ、これ、気をつけなきゃ」と思うくらいでいいんじゃないでしょうか。


8/27/2008

つい、「はい」と。


最近、八重洲ブックセンターでカバーをお願いすると、JT喫煙マナーカバーになります。いつもの花柄のもあるけど、デフォルトはJTで、花柄はオプション扱い。

いちおう、「こちらのカバーになりますが、よろしいですか?」と聞いてはくれるんですが、つい「はい」って答えてしまいます。

「花柄のがよかったなあ」「煙草吸わないんだけどなあ」「電車でこれ開いてたらはずかしいよなあ」なんてお思いながら、店員さんがカバーをかけてくれるのを待ちます。

NOと言えないほにゃほにゃじゃないけど、「いいえ」より「はい」のほうが言いやすいんですよね。

そういえば、ローソンも、レジ袋削減のために「袋にお入れしますか」から「このままでよろしいですか」に声かけを変更してましたね。



【今日の勉強】
○中小企業診断士
T社事例直前演習 3と4
Total 3.0H

3の生産管理:ちょっとあっさりしすぎでは?本番でこんなに方向性決めやすい問題が連発するのは考えにくいような。直前期だけに、もうすこし本番寄りの問題を出してほしいところなんですが。
4の財務会計:痛恨のNPV計算ミス!全体的にはこれもなんだか本番と違うような。

8/26/2008

パソコン以外でエントリー

突然パソコンがネットに繋がらなくなったので、iPod Touchでエントリーしてます。勝手はだいぶちがいますが、案外違和感なく操作できるものですね。ちょっとした書き物くらいなら、パソコン立ち上げるより手軽かも。

【今日の勉強】
◯中小企業診断士
T社事例直前演習 2
Total 1.75H

与件文の読み込みがまだ足りない。とくに後半にいくにつれて流し読みになってしまって読み逃しが多発。注意深く読んでいかないと。

【本】御社のトヨタ生産方式は、なぜ、うまくいかないのか? ~偽りの「かんばん」~ 若井吉樹

トヨタ生産方式の解説書というよりは、導入にあたっての心構えを解いた本という感じでしょうか。ただ漫然とそれらしいものを導入したって成功しませんよ。本質をとことん理解して全力で取り組まなければ効果はでませんよ。

ひとつひとつの概念はとてもシンプルですぐに導入できそうなんだけど、ことの本質はそれらの概念がすべて一つの方向性のもと有機的に結びついているということなんですね。だからつまみぐいのようにトヨタ生産方式を導入しても、よくて部分最適であって会社が目指す全社的な効率化はとても実現できない。常に全体最適を考えていかなくてはならないと。

非常に簡単な内容なのでこれだけではトヨタ生産方式の理解にはまったくたりませんが、これからトヨタ生産方式を学ぶ問題意識をもつうえでとても参考になるものがあります。

8/25/2008

通販会社の防犯意識

昨日は熱海-小田原の大雨で新幹線の中に閉じ込められました。結局、夜8時に新大阪を出て、東京の我が家にたどり着いたのが朝5時。9時間の長旅。天候ばかりはどうにもなりませんね。



さて、ちょっと前のある日のこと。

マンションの玄関に設置されてる郵便受けから新聞を取り出していたところ、隣の郵便受けから郵便物がはみ出しているのが目に入りました。A4くらいの冊子が透明なビニールに包まれていて、表紙に大きく「pj」と書かれている。若い女性用の下着通販会社ピーチジョンのカタログですね。ふーん、この部屋には女の人が住んでるのか、と何気なく思ってそのときはおわりました。

でも、よくよく考えてみると、これって実は非常に危険なことだよなあ、と。私の住むマンションは見るからに単身者向けで、その郵便受けにピーチジョンのカタログが入っているということは、まず間違いなく”その部屋には若い女性が一人暮らししている”と推測できるわけです。仮に悪意のある人物がそのことに気付いたとしたら、その部屋に住む女性は危険にさらされることになりかねない。

もちろん、その気になれば他にいくらでも居住者の情報を取得する方法はあります。そうだとしても、受取人の属性を推測しやすいカタログの中身がまるわかりになってしまう状況というのは好ましくない。特に、カタログは郵便受けからはみ出しやすいからなおのこと目につきやすいですし。中身のわかりにくい紙封筒にいれてカタログを送付するなどの対応はできないものでしょうか。

ピーチジョンの社長は女性で、従業員も相当数が女性だったと記憶しています。だったら、同じ女性として、カタログを受け取る女性の防犯に協力できないものか、すこしでもリスクを与えずにすませられるか、といったところも、本質的サービスではないにしても意識してほしいものです。

親会社のワコールのWebサイトをみたところ、立派なCSR報告書が作成されていて、さまざまな慈善活動や文化振興活動が行われているようです。それはそれとして大切なことですが、こうしたカタログのパッケージ一つが及ぼす影響への意識も大切なCSRなんじゃないかと思ったりもします。



【今日の勉強】
○中小企業診断士
T社事例直前演習 1
Total 1.75H
1週間やらないだけでも多少感覚が鈍っているのがわかります。
それにしても、やっぱり予備校の演習はおもんない。過去問と感覚がちがいすぎる。

【本】 組織論  桑田耕太郎/田尾雅夫

日本語で書かれた組織論の教科書といえばとりあえずこれ、というくらいに定番の教科書。確かに組織の定義から組織の動態的変化まで網羅的に記述されています。

あくまでも教科書なので、組織に関する諸問題に対する解決策を提示してくれるわけではありません。具体的な事例が出てくるわけでもないので、イメージもつかみにくい。ただ淡々と組織論の諸研究がいままでに得た成果を説明しています。なので、実用性、即効性という観点からはあまり役に立たない。

しかし、その一方で抽象化・体系化された記述は、組織というものをどう見るかどこから見るかという視点について多くの示唆を与えてくれます。おそらく多くの人がそれぞれなりの組織象を持っていることでしょうが、それは裏を返せば共通認識を持てるほどには誰も組織についてわかっていないということでもあるんでしょう。だからこそ、表面的な違いに振り回されることなく、より本質的な組織に関する洞察が必要になって、そのためには本書のように抽象化された議論が洞察の土台として非常に大切なものだと思います。



ちなみに、今年の診断士1次試験について、某受験予備校の講師が”今年も試験委員が著者「組織論」からたくさん出題”なんて解説してましたが、日本語で書かれた組織論の教科書がそもそも数えるほどしかない中の定番書で、かつ、内容的にもスタンダードなのだから、著者が試験委員であろうとなかろうと、必然的にネタ本になるものです。予備校のテキストもそのネタ本をもとにしてるはず。本書からの引用があったのは事実は事実なんでしょうけど、なんだかなあ、という感じがします。

8/24/2008

今週のまとめ

【今週のまとめ 7/18-24】
勉強
・中小企業診断士 過去問 2事例 3.0H
……夏休みでリフレッシュしたので、今週からはまたばりばりやります。


ラジ&ピース 絲山秋子

マンガ
海獣の子供 3 五十嵐大介
……アニミズムとか汎神論とかの影響が色濃いのだけど、文明への対抗概念として描かれているのが気になります。五十嵐大介の作品はいつも安易な善悪二元論に陥りかねない感じなので、今回もそうならないか心配。

鋼の錬金術師 20 荒川弘
……収束に向かわせようとしているのはわかるのだけど、あまりにもキャラクターが分散してしまってせわしない。もうすこしキャラクターを絞るべきじゃなかったかな。

のだめカンタービレ 21 二ノ宮和子
……ずっと停滞してたのがようやく動き出すかなー、ってあたりでおわっちゃった。次巻に期待。

ヴァムビール 1 樹なつみ
……まだ始まったばかりという印象。それほど設定や世界観がしっかりしているようにはまだ見えないけれど、樹なつみはいつもしっかりと世界観を作ってから描いているから、次巻以降でいろいろ見せてくれるんでしょう。

京大M1物語 1 稲井雄人
……リアルさにもシュールさにも欠けていて、ちゃんと考えて描いているように思えない。京大+M1なんて素材を使っておきながらこれってどうなんでしょう。

映画
・スカイ・クロラ
……相変わらず判断が難しい。おもしろいようなそうでないような、好きなような嫌いなような。設定的に「G.R.M」を連想させるところがあって、よっぽど作りたいんだろうなあと。

・ピューと吹く!ジャガー THE MOVIE
……予想通りあんましおもしろくない。要潤はああいうコメディがよく似合うなあ、と再確認。

その他
フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち 東京都美術館

8/22/2008

【本】ラジ&ピース 絲山秋子

見知らぬ土地にやってきたラジオDJの日常の話。何かが起こるわけでもなく彼女の日々が綴られていくだけなのですが、それだけなのにとても深く浸れる感じ。浸ったところで決して心地好いわけではなく、後悔も痛みも疼きもある。だとしてもそれらをひっくるめてひたるしかない。雰囲気としては、デビュー作の「イッツ・オンリー・トーク」に近いのですが、自己肯定も自己否定も絶対にしてやらないっていうような鋭さがさらに増しています。刺さった瞬間はそれほどでもないけれど後から切れ味の鋭さがじわじわきます。久々の新作でしたが期待を裏切らないすばらしさでした。

デシジョンツリー

平成19年事例4第3問についてやいのやいの言ってきましたが(エントリー1回目2回目)、takeshiさんが試験当時の対応について実体験をエントリーされています。いかにリスクを回避する対応ができるかという視点から非常に参考になる内容です。同じような場面に遭遇した際に戦略的に解答を選び取っていくことも念頭におきながら試験対策をしていきたいものです。

その第3問の要となると思われるデシジョンツリー問題での期待値計算について簡単に記しておきます。(デシジョンツリーとその期待値計算は、会計、ファイナンスだけでなく、情報技術関係でも初歩的な知識なので、試験に関係なく知っておいて損はないと思います)


○デシジョンツリー問題での期待値計算の方法

計算方法はとっても簡単。以下のルールに従って計算します。

・終端ノードから開始点へと逆算する
・確率ノードでは確率とブランチ(枝)の価値から期待値を算出する
・決定ノードでは分岐しているブランチのうち最適なものの価値を期待値とおく
・費用価値がある場合には直近の期待値から差し引く

 ※デシジョンツリーの用語
 決定ノード:意思決定者がコントロールできる分岐
 確率ノード:意思決定者がコントロールできず、確率論的に事象が決まる分岐
 終端ノード:各ブランチの最終点。

ルール通りに設問1を解くと第3問設例1の期待正味現在価値は77百万円になります。


以下、このルールを踏まえて、主な論点を検討してみます。


○Y投資案は考えなくていいの?
決定ノードでは最適な選択肢を使用します。合理的な意思決定者であれば利益を最大化する意思決定を行うはずで、進んで不利な投資案を選択することはないと想定されるからです(合理的な意思決定のためのツールなので、合理的でない意思決定者は当然想定されません)。つまり、合理的意思決定者が利益を最大化する意思決定を行う確率は100%、として計算するということです。

なので、Y投資案は、設備投資する=CFはマイナス、設備投資しない=CFはゼロという決定ノードでは、不利な選択肢の”設備投資する”は却下され、”投資しない”のゼロがY投資案の決定ノードにおける期待値となります。

多くの模範解答で採用されている35百万円という解答は、決定ノードでのルールを無視しています。(Y投資案も選択の余地なく実行しなければならない、という条件があるとしたらルールの逸脱は避けられますが、設問2のX投資案のみ投資すべきというアドバイスと整合しません)


○設問1と設問2の順番は逆?
いくつかのブログで、77百万円が正答なら、設問1と2の順番が逆でないとおかしいのでは?という意見がありました。
最適経路の判別には終端ノードから開始点への逆算が必要なので、開始点の期待値が算定されない限りはどの経路が最適なのかは不明です。つまり期待値が計算されて初めて最適な選択肢が判明します。したがって、設問1で期待値を出して、それに基づいて設問2で最適な選択肢を提案するというのは自然な流れだと考えられます。


○途中のCFがマイナスになる段階投資の場合は別途考慮が必要?
さきほどのtakeshiさんのエントリーより。途中ではマイナスのCFになるものの、最終段階でプラスに逆転するような段階投資の場合は何らかの考慮を別途してあげないと却下されるのではないか、という趣旨かと思います。しかし、終端ノードからの逆算によって帰納的に算定されることから、特に意識しなくても途中段階のCFのマイナスについても自動的に考慮された形での期待値が算定できます。



こんな感じで、デシジョンツリーのルール通りに計算すればとてもシンプルに解ける問題だったと思います。先述のように広い分野で初歩的な知識なので、出題者も当然のこととして詳しい説明を省いたのではないでしょうか。
しかし、ルール自体を知らない場合には、判断に迷うことになると思います。そんな時間的精神的にぎりぎりの中では、takeshiさんのようなリスクを最小にする解答選択戦略というものが大切になるんでしょうね。
一方で、ノウハウを売りにするはずの予備校の模範解答がデシジョンツリーを理解してないというのはちょっと……という気がします(LECはちょっとどころじゃないですが…)。

8/19/2008

フェルメール展

東京都美術館の「フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち」へ。

現存作品が36点しかないフェルメールの作品が7点もやってくるという前代未聞の展覧会なので相当な混雑を覚悟してたのですが、お盆明けの朝イチということもあって意外とゆったりまわることができました。フェルメール以外の作品も含めて40点ほどと数の面ではこじんまりとしていたことも、ひとつひとつじっくり鑑賞する余裕につながっていたと思います。

どれもとても面白かったのですが、こういろいろな作品と並べてみると、フェルメールのすごさがよくわかります。色彩の美しさ、デッサンの巧みさ、光の処理のうまさなどなど挙げればきりがないのですが、私がいちばん感動したのは構図の絶妙さです。作品を見た瞬間の印象は、極めて精緻に構成された構図で、まるで定規で寸法を測ってぎちぎちに組み立てたかのように隙とか余裕を感じさせない印象があります。静かに閉じられた感じとでもいうか。それをじっくり観ていくと、流れがある、動きがある、物語がある。額の内側にとどまらない感じがします。精緻な構成の一部を崩して、そこから動きや開放感を生み出すというのはよくあることなのですが、そうした崩しが作品には感じられない。それなのに、はっきりと動きや流れを感じさせる。この両立をどう生み出しているのか素人の私には全く謎なのですが、フェルメールがすごいと言われる理由がわかった気がします。やはり、こういうのは実物を前にしないとなかなか実感できないものですね。



美術館でひとつ面白いと思ったのですが、館内で、紙にペンのようなものをあてている人がちらほら見かけたのでちょっと覗いてみると、音声ガイドのシステムでした。A4ほどの紙に作品の画像がいくつか印刷されていて、それにペン形の読み取り装置をかざすと機械が作品を認識、作品に対応した音声ガイドが始まる、という仕組みのようです。作品の横に番号がふってあって、その番号を押したり番号にダイヤルを合わせたりするとガイドが始まる、というのが一般的だと思ってましたが、最近はこんなのがあるんですね。ぜんぜん知りませんでした。

確かに、このペン式システムであれば、直観的な操作なので、機械操作の苦手な方にも扱いやすいかもしれません(ちょうどCUIからGUIへ移行したように)。ただ、逆に手元を見る機会が増えて鑑賞に中断をもたらしかねないこと、右手に紙左手に読み取りペンで両手が塞がってしまうこと、などを考えるとまだ改良の余地はありそうです。

他の美術館でも音声ガイドに対する取り組みがいろいろ行われているようです。たとえば、東京都現代美術館では携帯電話に音声ガイドをダウンロードできるサービスが始まっています。あらかじめダウンロードしておけばガイドを借りる必要がないし、使い慣れた携帯で操作ができるというわけ。その他にも、ディスプレイのついた携帯端末を利用して、音声ガイドだけでなく作品に関する様々な情報を提供する、なんていう実験もされているようです。これなんかは、作品とうまく連動させることができれば、いままでとは違った作品の楽しみ方ができるんじゃないかなあ、と思います。

音声ガイドなんていう、進化のなさそうな誰も見向きもしなさそうなところにも、いろいろな可能性があるんだなあということを再認識しました。一見成熟しきってしまったように見える市場・製品でも、切り口やイノベーション次第では再び活性化するかも、というプロダクトライフサイクルの話を彷彿とさせます。


【今日の勉強】
○中小企業診断士
過去問 17年度 事例4
Total 1.5H

8/18/2008

過去問解説の読み比べ

世の中はもうお盆あけなんですね。私は今週からおやすみです。

近所の本屋をぶらぶらしてたら、診断士コーナーがあったので、先日エントリーした過去問19年度事例4第3問設問1の解答例をくらべてみました(いちど気になるととことん気になってしまうので)。

書名解答別解
12次試験合格者の頭の中にあった全ノウハウ35なし
22次試験過去問題集(同友館)3577
3ふぞろいな合格答案3577
4診断助言事例クイックマスター応用編77なし
52次試験過去問題集(TAC)77なし
62次試験解答速報(LEC)35なし
72次試験解答速報(大原)35なし

※2 同友館は企業診断07/12号とたぶん同じ。
※6 LECと7 大原はWeb掲載の解答速報から(大原は解説なし)。


 解答の数では、35百万円が5件、77百万円が2件と35百万円が優勢(1〜4までは同友館の出版ですがばらばらですね)。これにあわせて解説も読んでいくと、それぞれ特徴が出ておもしろいです。

○77百万円と解答した4「TAC」と5「クイックマスター」はデシジョンツリーを使用して解答を算出しています(5は35百万の可能性についても言及、最終的に出題の趣旨を考慮して却下)。
○2「同友館」と3「ふぞろい〜」は35百万円としていますが、2はYには投資しないという意思決定をしたのならという条件付きで別解77百万を提示、3は2章本文でデシジョンツリー云々、77百万でも点が取れる云々の記述あり。4,5ほど明確でないにしろ、いずれも意思決定が期待値計算に及ぼす影響をある程度考慮しているようです(3は設問2のみデシジョンツリー問題と考えているのかもしれませんが)。
○残りの1、6、7は別解なしの35百万。解説のなかった7を除く1、6の解説にはデシジョンツリーに関する言及はなく、そもそもデシジョンツリーの問題として認識していない様子です。

 つまり、デシジョンツリーの問題と判断するかどうかが解答の分かれ目になるようですね。私はデシジョンツリーの問題と考えているので、35百万円とした解答が意思決定にかかる部分をどう判断してどう処理したのか、設問2との整合をどうとったのか興味があったのですが、残念ながらそのあたり詳しい説明はありませんでした。


 ちなみに、LECの解答解説はかなりぶっとんでます。例えるなら、”飲み会の代金をカードで立替払いしてみんなのぶんを現金で回収したらお財布が膨らんで臨時収入みたいな気になっちゃってさらに飲みにいってしまうおっさん”ばりの理屈といったらいいのかな。
 ここまで財務会計の基本を無視されてしまうと、どう対処したらいいのかかえって困ってしまいます。一カ所だけ引用するとこんな感じ。
7億円の投資は、投資有価証券を置き換えただけでのことであり、実質的なキャッシュアウトは0である。平成19 年度の4千万円の投資についても、投資有価証券保有による4千万円の営業外費用で賄えると考えれば問題ない。その観点からは、Yについても、5億5千1百万円のキャッシュインが見込める。
いやいやいや、投資有価証券の売却だけにしとけば7億円のキャッシュインですから!


【今日の勉強】
○中小企業診断士
過去問 17年 事例3
Total 1.5H

8/17/2008

ALWAYS 三丁目の夕日

今更ながら観てみました。

話の舞台になっているのは、昭和33年前後。この頃の凶悪犯罪率・少年の凶悪犯罪率は戦後最悪で、大都市圏での大気汚染その他の環境問題も深刻化しつつある。完全失業率もオイルショック後ほどではないにしてもそれなりの高さ。いわば、戦後の経済成長による急速な変化がいろいろな問題を引き起こしてきた時期。

でも、そういう負の部分はこの映画にはいっさい描かれません。人々は未来への夢に満ちあふれ、純粋で、情に厚く、豊かでないなりにみんながんばってる、キラキラしてる。「昭和」という言葉のもとで、様々な意識操作を経て類型化、理想化された昭和30年代。そのキラキラの30年代が、これだけの映像で描かれるんだから圧巻。冒頭で東京の町並みがぶわーっと映し出される様は、映画ならでは(昭和な雰囲気出すために、あえて合成を緩くしてあるあたりも○)。

でも、やっぱり、これをみて”昔は良かった”なんて思ったらだめなんだなあ、エンドロールを眺めながら思ってしまいました。すくなくとも、この映画の登場人物たちは、”昔は良かった”なんてこれっぽっちも思っていない。彼らは前を見てる。来るべき未来に胸をふくらませてる。それは、たぶん理想化された昭和でなくてもそうだったはず。失われた昭和、懐かしの昭和に浸るのもたまにはいいけど、やっぱり今を見て、前を見ないと。

【今日の勉強】
○中小企業診断士
過去問 17年 事例1と2
Total 3.5H

【今週のまとめ】
○中小企業診断士
過去問 18年 17年
事例1 1
事例2 2
事例3 1
事例4 1
Total 8.75H

【本】
眠れない一族—食人の痕跡と殺人タンパクの謎 ダニエル T.マックス
性犯罪被害にあうということ 小林美佳
「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い
会社はだれのものか 岩井克人
キャズム ジェフリー・ムーア

【映画】
・ALWAYS 三丁目の夕日
・エリザベス
……コスプレものにありがちな重苦しさがそんなにないわりに歴史物語としての重厚さもしっかり。ケイト・ブランシェットの迫力とジェフリー・ラッシュのうさんくささだけで満足。
・黄泉がえり
……今見ると実はものすごく豪華な顔ぶれ。おもしろくないことないんだけど、展開が予想の範囲を超えなくて物足りない。それと、話にそれほど関係ないのに柴咲コウが3曲も熱唱するとか、いかにもテレビ局系の映画な感じ。

8/16/2008

【本】眠れない一族—食人の痕跡と殺人タンパクの謎 ダニエル T.マックス

50歳をすぎると突然発症して、眠れなくなって最後には消耗し尽くして死ぬという謎の遺伝病を軸に、その原因のプリオンの発見から現在までを追ったノンフィクション。

タイトルの眠れない一族の話は全体からすればごく一部で、大半はプリオン発見までの経緯と、その後の状況についての記述なのですが、どちらもとてもおもしろい。ちょっとした小説以上に刺激的です。不眠症を巡る話の恐ろしさはほとんどホラー小説、プリオン研究に携わる研究者たちの功名心と思惑の錯綜はまるで白い巨塔、プリオン対応が後手後手に回る政府当局やプリオンの恐怖に過剰に反応する人々の描写はパニックもの……一冊で2度も3度もおいしい。さまざまな人名や名称が頻出してちょっと整理が足りないきらいもありますが、現在までのプリオンに関する学術的知識や各国の対応も網羅的に記載されていて、プリオンの入門書としてもかなりのもの。ここまで知的好奇心をくすぐりつつ読み物としても非常におもしろい、というのはなかなかないように思います。

ちなみに、BSE(狂牛病)騒動で一気に有名になったプリオンですが、その概念というのは、従来の生物学では考えられない全く新しいものなのですね。つまり、感染というのは細菌やウィルスなどの生物あるいはDNA,RNAを持ったものによって引き起こされるというのが当然だったところ、ただのタンパク質が病気を引き起こし、さらには動物から動物、動物から人、人から人へと感染するという。だからこそ、ただのタンパク質が感染を起こすわけがない、と狂牛病プリオン原因説に反対する人がいるんですね。しかし、オートポイエーシス理論なんかを考えると、タンパク質でも自己複製能力があって感染源になりうるというのは、決しておかしな話ではない気がします。プリオン仮説もオートポイエーシス理論もいずれも70年代あたりに提唱されたのは偶然ではないかも。

いやー、ページをめくるのももどかしいというのはまさにこのこと、というくらいに面白かった。

8/14/2008

【本】性犯罪被害にあうということ 小林美佳

こういう本の感想は非常に難しいです。

私は性犯罪の被害にあったことも被害にあったという人も周りにいませんから、こうして本を読むことでしか被害に遭われた方の気持ちを想像するほかはありません。想像はどこまでも想像でしかなく、当事者の気持ちには到底届くことはないでしょう。

だから、著者の気持ちや考えに違和感を抱く部分も多々あるのですが、そうした違和感が私の勘違いなのか考えが至らないからなのか、あるいはまっとうな違和感なのか、そうしたところがよくわかりません。そして、そうした違和感をはっきりと表現してしまっていいのかどうかも。自分が表現することでだれかを傷つけはしないかと。

しかし、そうした躊躇がそれぞれの理解を妨げることになるのも事実なんですよね。理解するにはお互いがお互いの声に耳を傾けなくてはいけないけれど、こと性犯罪被害についてはそれがなかなか進まない。

著者がこうして当事者として声を出したことは、理解のための一定のきっかけになったけれど、まだそれは対話までいっていない。当事者の支援を優先しつつ、当事者とそれ以外の人々とが理解のための対話をどのようにできるのか、そういうことにも目を向けていかないと、と思ったりします。

いやしかし、考えれば考えるほど難しいです。

【本】「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い 禁じられた数字〈下〉 山田真哉

食い逃げされてもバイトは雇うな」の続編(あっちが上でこっちが下)。「さおだけ屋〜」にしても、タイトルの付け方が非常にうまいですね。内容がうっすら予想できるんだけど、答えまでは提示しない。いやでも読んでみたくなります。このタイトルだけで勝ったも同然。

前作がゆるゆるで中身が薄かったので今作もあまり期待していなかったのですが、こちらはかなり楽しめました。前作で、数字で表現することの強さ、数字で考えることの大切さを述べておいて、今作ではそうした数字がいきすぎること、一人歩きすることに待ったをかける。数字はある一面を表現するのにとても強力で便利だけど、それはあくまで物事の一面だけなんだよね、数字に頼りすぎると他の視点が見えなくなって大きな間違いをおこすよ、と。そんな感じで、前作のカウンターをがんがん投入していって、最終的に、いろんな視点の一つとして数字をうまくつかっていこうというところに落ち着く。そういうプロセスが丁寧に書かれていて、結構中身が濃い。

「さおだけ屋〜」で会計というなじみの薄いものの効果を紹介して、それを前作で数字全般に拡大、そして今作で会計・数字の行き過ぎをただして一つの有効な視点として調和的に位置づける……「さおだけ屋〜」からの流れは、実は結構周到に構成されていたんだなあと思います(ただ、前作は中身すかすかなので、「さおだけ屋〜」と今作とに組み入れてしまってよかったとは思う)。

確かに、会計の入門書や啓蒙書はここ何年か多く出ていて、世の中の会計に対する興味・関心の高まりはわかるんですが、それがビジネスの中にしっかりと位置づけられているわけではないんですよね。なにか、会計だけがふわふわと一人で浮いていて、他とのつながりまで考えられていないというか。会計的な知識ばかりを説く人がいるかと思えば、一方で、数字じゃないんだよ、経理屋に何がわかる、と無条件に拒絶する人もいる、という状況。どちらも、会計を全体の中の一つの視点として認識できていないんですよね。なまじ入門書・啓蒙書でちょっとかじったような人が増えると、そんな誤解も多くなりそう。だから、入門書でそこまで書かれているというのはとても意味があることだと思います。



8/13/2008

会計基準の国際化

診断士とはぜんぜん関係のない話でしたが…

今日の日経新聞に、「会計基準の国際化「連結先行」で改正へ」という記事が出てました。日本の会計基準を国際財務報告基準(IFRS)にあわせていこうというのが現状の流れですが、これをとりあえず連結だけ先にやろうというもの。単体は税法のからみもあって調整が大変そうですから、連結だけ改正、ということになれば、懸案の国際財務報告基準とのコンバージェンス(収斂)も加速されそうです。

企業活動の成果を貨幣的に記録する技術としてみた場合にIFRSが日本基準より優れているとは必ずしも思わないのですが、会計基準が企業活動を適切に表現できているかという観点と同じくらい(orそれ以上に)、企業が同じ基準を採用して企業間の比較可能性が確保されるかという観点も非常に大切なので、国際的な流れにそってコンバージェンスを進めていくのは必然でしょう。

ここまできたら、もうコンバージェンスじゃなくていっそのことアドプション(導入)でいいじゃん。と考えたりもするんですが、どうなんでしょうね。そういう可能性も本当にあるんじゃないだろうか。コンバージェンスにせよアドプションにせよ、決算担当の方はまたいろいろと勉強し直さないといけなさそうで大変です。


【今日の勉強】
○中小企業診断士
過去問 18年度 事例4
Total 1.75H

8/12/2008

過去問はおもしろい

先週今週と過去問を解いていて感じたのですが、予備校の演習問題よりも過去問のほうが解きがいがありますね。おもしろい。

どちらが難しい易しいというわけでもないのですが、与件文にしろ問題文にしろ、過去問は頭をフル回転させ考えさせるようにできている気がします。予備校の演習問題は上澄みをかすめ取って解答していく感じですが、過去問は直接向かい合い格闘の末解答を導きだすという印象。


やはり、さまざまなケースを研究してきた学者先生が作成した問題と、それを模して作られた問題とでは、何か本質的な違いがあるのでしょう。模試では高得点なのに本番で点につながらない、あるいはその逆、というのはこの違いが原因だったりするのかも。かつて某国家試験を受けたときも似たような印象をうけたので、試験勉強をしていくうえではこの違いは不可避的なものかもしれません。とするなら、模試の結果に一喜一憂してないで、本質的な理解に努めるのがいちばん、ということですね。



【今日の勉強】
○中小企業診断士
2次過去問 18年度 事例3
Total 2.0H

【本】会社はだれのものか 岩井克人

タイトルの通り、会社は誰のものかということについての本。ライブドアのニッポン放送株買収騒動ももうかなり前のことですが、その直後に出された本です。本の中で触れられているように、ライブドアとフジテレビとがやりあったおかげで、会社はだれのものかという問いが一般にもはっきりと認識されたように思います。

90年代以降、いわゆる日本的経営のカウンターとして株主主権論が強く主張されてきて、その象徴としてニッポン放送騒動もあったけれど、やっぱりそんな単純な話ではないんじゃないか、会社には従業員がいて取引先がいて顧客がいて…といろいろな人々が関わっているはずで、そうしたさまざまなステークホルダーとの関わりはどう処理するのか、という疑問は多くの人が持っていたと思います。そんな中で、こうしたみんなの疑問をそのままタイトルにした本が出されたというのはとても意味のあることだと思います。

岩井克人先生の主張としては、会社は株主のものでとにもかくにも株主の利益を最大化することが至上命題だ、という株主主権論はやっぱりおかしいよね。もっといろいろな可能性があるよね、という所でしょう。私も、岩井先生の株主至上の理論はおかしいし、もっと他の可能性についても考えていく必要があると思います。

しかし、その結論を導くロジックは釈然としないものを感じました。

株主主権論のおかしさを、法律上の「会社」概念の法理論的なあやまりから導きだしているのですが、そもそもこの法律上の会社概念を所与として論理を展開すること自体が非常におかしい。本書で語られる「会社は誰のものか」という問いは、会社の法律的な所有権はどこあるのかという狭い範囲の話ではなくて、会社という存在が社会に対してどうあるべきか、という問いのはずです。そういうあるべきかたちを論ずるのに、既存の法体系を前提とするのは説得力がありません。あるべきかたちにそぐわない法体系は変更することが可能であるはずで、法体系にあるべきかたちが従属するということは本末転倒です。ここでは、既存の法体系は一度カッコに入れた状態で、会社(法的な意味ではなく営利活動を行う組織体という程度の意味)としてのあるべきすがたが論じられる必要があるはずです。

岩井先生が既存の法体系を前提に議論を進めざるを得なかったのは、(個人経営の)企業と(法人としての)会社とを分離して話を進めるという方針だったせいだと思います。なぜ分離したのかといえば、会社が”法人格”を獲得したことによって、モノしての会社とヒトとしての会社という二面性もつことになったということを軸に理論を構築しているからでしょう。しかし、”法人格”という概念の裏付けを行うには、既存の法体系を前提とせざるを得ない。”法人格”というものにこだわりすぎたがために、会社のあり方と言う根源的な問いを発していながら、既存法体系の枠組みの中のみで考えるという、中途半端な結果になってしまったと思います。

しかし、既存の法体系自体を前提とせず、可変な存在として考えたらならば、より多くの可能性を検討できたはずです。たとえば、(現実的かどうかは別として)法人格というものの存在しない法体系だって考えられるはずです。そうした、法律論にしばられない、経済的、社会的な実体として会社というものを考えたなら、得るものもより大きかったんじゃないでしょうか。会社の本質的なあり方について真剣に考える数少ない本だけに、非常に残念に思います。

8/11/2008

【本】キャズム ジェフリー・ムーア

イノベーション、特にハイテク・イノベーションを、どうしたら広く普及させシェアを獲得できるか。あるイノベーションの普及は、普及率が16%を超えると一気に広まっていくというのはマーケティングでは有名な話ですね。ところが、その16%付近に位置するアーリー・アドプター(早期採用者)までは普及しても、アーリー・マジョリティ(早期多数者)まで到達することができずにニッチなままで終わってしまうものも多い。そのアーリー・アドプターとアーリー・マジョリティの間には、大きな溝(=キャズム)が横たわっていて、そこを超えない限りイノベーションは普及しない、というのがこの本の趣旨です。

そのキャズムが生じるのは、アーリー・アドプターとアーリー・マジョリティーとがそもそも全く性質が違っていて、さらにアーリー・マジョリティーは保守的で前例を必要とする。だから、アーリー・アドプターに対して行ってきた数々の施策はアーリーマジョリティには通用せず、アーリーマジョリティへの普及は困難になる、ということでしょうか。ターゲットとする顧客層の違いを明確にすることで、キャズムを超えるべき新しいマーケティングを提案しています。こうして構造化されたターゲットの違いから、とるべき施策を演繹的に導きだしているので、論理的な一貫性があって非常に説得力があります。そして、ただ演繹的でなく、さまざまなケースを提示することで、帰納的な説得力もある。

ただ、実際のところいちばん難しいのは、会社が今まさにキャズムにはまっている、ということをちゃんと認識できるかどうかでしょう。まだアーリー・アドプターをターゲットにしていていいのか、アーリー・マジョリティーにターゲットをかえるべき時期に来ているのか、そもそもだれがアーリー・アドプターでだればアーリー・マジョリティーなのか。そこを見極めることがもっとも大切で最も困難なんだろうなあ、と感じます。普及率なんてのは市場規模がはっきりわかることが前提ですが、イノベーションは未知数で市場規模の予測は難しい。そうしたことをどう見極めるかについては詳しくは書かれていません。そこはさまざまな状況を考慮して総合的に判断、ということにならざるをえないのでしょうか。

とはいえ、キャズムという概念と、それをどうこえるかという命題が、とても構造的かつ明解に書かれていて、非常におもしろくて示唆に富む内容です。ハイテク産業に限らず、マーケティングにかかわるすべての人が読んで損は無いものだと思います。


それにしても、タイトルと表紙デザインが流行りものというか一過性のものというか、時事的な内容をあつかった本のような印象を与えてしまう気がします。せっかく良い本なのでもう少し長続きしそうなタイトルとデザインを考えた方がよかったんじゃないでしょうかね。


テーマの読み取り・設定は?

【今日の勉強】
○中小企業診断士
2次過去問 18年 事例2
Total 2.0H

TACの回答解説にもあるように、明らかに現有資源の活用と差別化の2点がテーマでした。事例全体のテーマを読み取ってからそれに沿って各問題を解答していくという戦略はどうなんでしょう。ありなんでしょうか。今回のようにテーマが明確だと解答しやすいんですが、そうでない場合も多いように思います。大局的なテーマを設定した方が解答全体の一貫性や解答間の整合性は保ちやすいように思いますし、その反面、テーマの読み取りに失敗すれば命取りだし、テーマに縛られて解答しづらくなる可能性も。はたして、テーマの読み取り・設定はすべきなのかそうでないのか…

8/10/2008

嵐になるまで待って


昨日は、演劇集団キャラメルボックスの「嵐になるまで待って」に行ってきました。
キャラメルボックスの作品を観るは今回で7回目。
いままで原作ありの作品ばかり観ていたのですが、今回はオリジナル(厳密にはちがうけど)。さらに4度も再演しているということで、ちょっと期待大きめで…

うーん、正直なところ、期待値まで届きませんでした。あらゆるシーン、あらゆる台詞、あらゆる設定の動機付けがいま一歩弱いというか、必然性に欠けるというか。おかしいやろ、っていうほどのところは無いんですが、どこをとっても最適解は他にあったんじゃないか、というとこばかりなんですよね。他の設定他のシーン他の台詞は考えられない、これしかない。ってものがない。コンスタントに安打は出るけど、ホームランは出ないし、得点につながってない。歯痒さばかりがのこってしまった。

そんな感じで今回は若干残念でした。黒川智花客演の次回作に期待したいところです。


それにしても、山田真哉さんうらやましい。



【今週のまとめ】
【勉強】
○中小企業診断士 過去問 3問 6時間

【本】
・森見登美彦 「きつねのはなし」

【映画】
・魔法にかけられて
…思ったより面白いです。こういう気楽に観られる作品ていいなあ。

【舞台とか】
・演劇集団キャラメルボックス 「嵐になるまで待って」

8/08/2008

眠いので備忘だけ

おやすみなさい。

【今日の勉強】
○中小企業診断士
過去問 18年 事例1
Total 1.75H

8/07/2008

ちょっと休憩

最近ばたばたして疲れているからか、きのうきょうと勉強に集中できていません。調子が出ないときは何をやってもだめな性格ので、こんなときは焦らずゆっくりします。

さて、おとといのエントリーのあと、アクセスが急増して驚いています。コメントいただいたのがtakeshiさんだけだったので、みんなあまり興味ないのかなあ、と思っていたのですが。takeshiさんが執筆メンバーのみなさんへご紹介くださったおかげでしょうか。受験生がえらそう書いてしまって、気を悪くされた方がいないかちょっと心配です。

まだまだ考え至っていない視点もあると思いますので、そういうところはご指摘いただけるとたいへんうれしいです。

8/05/2008

おかしい?

ふぞろいな合格答案」第3章ふぞろい流・模範解答の事例4 第3問 設問1の模範解答がおかしいように思います。(問題と解答・解説は長いので「ふぞろいな合格答案」をご覧ください)



デシジョンツリー+DCF法というのは、診断士以外でもおなじみの論点ですが、選択可能な分岐において不利な投資案件を選択することを前提に正味現在価値を計算することは、理論上も実務上も”ありえない”やりかたです。DCF法は正味現在価値のプラスとマイナスとで意思決定が明確だから使用されるのであって、それを逸脱した場合DCF法の本来的な存在意義がなくなってしまうものなんですよね。

仮に、模範解答のような計算になる場合があるとしたら、マイナスの投資案も実行しなくてはいけない、という強力な条件があった場合のみです。でも、そういう条件は問題文上明記されていませんし、選択不可であればそれはそもそもデシジョンツリーの問題ではなくただの確率の問題になってしまいます。

だから、DCF法の観点からも、デシジョンツリーの観点からも、模範解答は疑問符がつくと思います。部分点どころか、採点者にしてみれば「DCF法もデシジョンツリーもわかってねーなー」と判断しかねない気がします。多くの受験生の方がこの解答とはいえ、さすがに良くないんじゃないか、と思います。(追記1



あと、こちらはささいなことですが、第2章でこの事例4第3問を「デシジョンツリーとリアルオプションの問題だね」とありますが、これもちょっとへん。リアルオプションは投資評価理論で、デシジョンツリーやDCFはそこで使われる分析・意思決定ツールなので、並列させるには言葉の意味レベルが異なります。単に「リアルオプションの問題」というか、「デシジョンツリーとDCF法の問題」というか、になるんじゃないでしょうか。(追記2



なんだか批判的な内容になって大変申し訳ない気がします。書こうかどうしようかかなり迷ったのですが、ちょっと見過ごすことのできない内容だったので書きました。もしかしたら私の勘違いもあるかもしれないので、そこんとこはご指摘・ご指導お願いします。

追加エントリーその1その2もどうぞ。



(追記 その1 数値自体の意味から考えてみる)
模範解答のおかしさは、模範解答の数値(期待正味現在価値)が何を表しているか、という点に着目してもよくわかると思います。模範解答は要するに、”研究開発投資の結果がどう転んでもその後の収益性がどうなってもおかまいなしに、とにかく設備投資をした場合”の期待正味現在価値です。それっていったい何なのでしょう?その数値を出して何か役に立つのでしょうか。コンサルティングの観点からも意味の無い数値ですし、ましてや試験でそういう何かよくわからない数値を答えさせるということは考えにくいと思います。

(追記 その2 リアルオプションという表現)
よく考えてみると、リアルオプションの問題と呼ぶこと自体ちょっと不自然ですね。リアルオプションは、不確実な環境下でプロジェクト実行のタイミングや方法をコントロールすることで不確実性を軽減・吸収するといった、プロジェクトがもつ柔軟性や選択権それ自体の価値に着目した考え方です。通常のオプションと同様、柔軟性・選択権の価値(=オプションの価値)を定量化することで、意思決定に資する情報を得るというもの。たとえば、投資意思決定のタイミングを遅らせることで不確実性を軽減することができるとしたら、不確実性軽減のプレミアムとしての追加的コストをいくらまで支払えるか、といった問題です。

確かに一見リアルオプションの問題っぽい設定ですが、意思決定においてオプションの価値への着目も定量化も必要もないので、リアルオプションの問題と呼ぶにふさわしくないでしょう。「デシジョンツリーとDCF法を使用した設備投資の経済計算」と素直に呼ぶのがよいのではないかと思います。




【今日の勉強】
○中小企業診断士
過去問 19年 事例4
Total 1.75H

だんだんと事例4が得意科目になってきました。知識、スキルでなくて、問題への慣れの部分が大きかったようです。


8/04/2008

【本】きつねのはなし 森見登美彦

いつもの過剰な語り口が抑えられて、綺譚集にふさわしい端正な文章です。森見登美彦は文章の過剰さがいちばんの特徴だと思うのでちょっと物足りない感じはありますが、これはこれで捨てられない良さがあります。内容と文体がよくあっていて、なかなか密度の濃い4編。

今回も例のごとく京都が舞台なのですが、現代を舞台にしてこ、ういったすこし薄暗くて不思議で不気味な物語(鈴木清順の大正三部作のような)を紡げるのはやはり京都しかないように思います。そうした京都のなにかが潜んでいそうな雰囲気を街の描写とともにたんたんと描いているのがとても心地よい。京都のさまざまな景色が目に浮かびます。

いつもの過剰な語りの物語だけでなく、こういった系統の作品も継続的に書いていってほしいものです。

ぽっどきゃすてぃんぐ落語

最近「ぽっどきゃすてぃんぐ落語」という落語のビデオポッドキャストをよく見ているのですが、今週配信の三遊亭好二郎「お化け長屋」がとてもおもしろい。3度も観てしまいました。

風情とか情緒とかというようなものはあまり感じないのですが、テンポや勢いの良さ、キャラクターのおもしろさは「ぽっどきゃすてぃんぐ落語」に出ている噺家さんの中では群を抜いている気がします。好二郎さんの他の噺も観てみたくなります。毎月落語会主催しているようなので行ってみようかしら。こうやって、ひいきの噺家さんをみつけるのも落語の楽しみのひとつでしょうか。

「ぽっどきゃすてぃんぐ落語」はiTunes Storeから無料でダウンロードできるので、興味のある方はぜひ観てみてください(映像なしの音声版もあります)

【今日の勉強】
○中小企業診断士
過去問 19年 事例3
Total 2.5H

ネックはやはり事例3生産管理。自分の答案を見返してわかったことは、盛り込んだ要素が圧倒的に少ない。

A→B→C→Dというような一本道の論理展開は得意なのですが、A→B→C,D,E,Fというように枝分かれや列挙が求められるととたんに弱くなります。つい前者のような解答の仕方をしてしまって、結果的に十分な数の要素を盛り込めないままになる。事例3はとくに後者のような解答を必要とする問題が多いので、どうしても得点にむすびつかない、ということなのでしょう(反対に事例2なんかはやりやすい)。

これはなかなか大事な発見でした。そのあたり意識して事例に取り組んでみます。

8/03/2008

プロデューサー

今日は中学時代の友人と飲んできました。お互い映画が好きで映画の話をしたり観に行ったりしたのですが、彼は某映画会社に就職し観る側から作る側に。

そしてちょうど最近、初プロデュースとなる作品を完成させたばかりとのこと。過労で倒れて救急車で運ばれたりと、相当にハードな仕事だったようです。話を聞いているだけでも想像を絶する。それでも、産みの苦しみだけでなく、やりがい、達成感、将来の展望などさまざまなことを語ってくれました。やはりこういう話は実際に体験した人でなくては語り得ない現実感があります。そしてなにより、プロとしての意識をもって仕事をしている人の話は、とても刺激になり、自分も頑張ろうという気にさせてくれます。

それにしても、そんなふうに一つの作品を完成まで導くというのは少しうらやましい。映画業界に憧れた時期もあるだけになおさら。さすがに映画監督やプロデューサーになりたいとは思わないけれど、資金調達やなにかで映画製作のお手伝いしてみたいものです。

【今週のまとめ】
○中小企業診断士
実力養成演習 2回目 2つ
過去問 19年度 2つ
Total 6.5H

○本
クレイトン・クリステンセン「イノベーションのジレンマ」
野口吉昭「コンサルタントの「質問力」」
花村萬月「神の名前—王国記7 」
パオロ・マッツァリーノ「反社会学講座」

○マンガ
近藤ようこ「夜長姫と耳男」
近藤ようこ「宝の嫁」
日丸屋秀和「ヘタリア」

【本】反社会学講座  パオロ・マッツァリーノ

オトナ社会の紋切り型にメスを入れる「反常識の知」。 面白くってタメになる、禁断の知的エンターテイメント!

「新聞・テレビ・そして社会学者が紋切り型に 述べていることは大抵ウソが含まれている。 もっともらしい統計調査や常識とされているものを疑う目を持とう」 ということを具体例を挙げつつ実証していきます。

なるほどたしかに恣意的に集められた証拠に基づく紋切り型の意見をばっさばっさとなで切りしていって痛快。でも、ただなで切りしている、ということではないおもしろさがあります。その面白さは、本当の紋切り型の意見に反論し証拠を出し自らの意見を述べるという、この本のプロセス自体が、批判の対象の紋切り型の意見をそっくりそのまま踏襲しているということ。

本の冒頭で、社会学者の一般的な研究方法、としてだめな思考プロセスが提示されています。
・憎らしい相手を個人的な感情で見つけ出す。
・気に食わない理由を考えて結論を出す。
・自分の結論を裏付けるのに都合のいい資料・データだけを収集する(資料・データの意図的な誤読等はテクニックの一つ)
(以下略)
というようなプロセス。まさに、作者がやっているのがまさにこれ。都合のいい資料データを組み合わせて、恣意的で紋切り型の反論を導きだす。批判の対象となる思考プロセスについてまったく同じ思考プロセスを使って批判してみせるという再帰的な手口が鮮やか(*)

そいういうふうに恣意的な論理展開をあえてすることで、構成自体がお遊びとして成立しているのですね。さらに、このお遊びが理解できる人ははじめから紋切り型の意見にだまされることはないわけで、たいして役に立たないという意味においてもお遊びになっている。

ただ、逆に紋切り型の意見にころっとだまされるような人にはこのお遊びも真剣な批判の書になってしまうかもしれません。となると、今度は”紋切り型の意見に対する紋切り型の反論”に対してころっといってしまっているわけで、状況は変わっていない。お遊びでとどまっているうちはいいのですが、そのまま受け入れられてしまうとなると、それはまたあやういよなあと思います。

あと、タイトルに”社会学”って入っているけれど、ここで話の俎上にあがっているのは全然いわゆる時事問題、ジャーナリズムの話であって、社会学者といわれている人たちが研究している社会学の話は全然出てこないし、レベル的にかなり違うものですね。”反社会学講座”というのはお遊びのための大仰な名前であって、そこのところもちゃんとくみとらないと勘違いしかねない。

お遊びはお遊びとして、著者の名前のとおりまったり読むのがいちばんかと。





^.
(*)たとえば、こんな感じ。
家庭生活に不満な理由
・ただなんとなく…29.8%
・収入が少ない…28.2%
・親・夫・妻が理解しない…27.7%
・家庭内に争いごと…26.1%
という、複数回答可の質問結果に対して、
「ただなんとなく」と回答した人は複数回答をしていません。そうでなければきちんとした理由があることになり、「なんとなく」ではなくなるから矛盾します(だいじょうぶですか?このくらいの論理には、ついてきてくださいよ)。ということは、実質的には「ただなんとなく」不満な人がトップなのです。

という記述があります。つまり、数字的にはどっこいどっこいの結果だけど、実質は「ただなんとなく」だけが突出しているよ、ということを言っています。

でもこれ、「ただなんとなく」と他の理由が両立しないとはいえないことはちょっと考えたらわかりますよね。「家族が理解してくれないのは不満の原因なんだけど、それだけじゃないんだよなあ。わかんないけど、なんとなくそれだけじゃない」という人なら「ただなんとなく」が両立しうるわけです(てか、そいういう人のほうが多いと思う)。つまり、「ただなんとなく」と回答した人は複数回答をしていないとは言い切れないわけ(調査段階で「ただなんとなく」をえらんだ場合は複数回答は禁止としていたら別ですが)。

で、両立しうることを前提として、こんな単純化した状況を考えてみる。たとえば2名の回答者のうちひとりは9割がた「収入が少ない」ことが不満だけどのこり1割くらいは「なんとなく」で、もうひとりは4割が「家庭内に争いごと」4割が「親・夫・妻が理解しない」こと2割が「ただなんとなく」だったとしたら、得票数としては、
  ・ただなんとなく2票
  ・収入が少ない1票
  ・親・夫・妻が理解しない1票
  ・家庭内に争いごと1票
と「ただなんとなく」が1位ですが、不満の割合の平均値をとったなら、
  ・ただなんとなく15%
  ・収入が少ない45%
  ・親・夫・妻が理解しない20%
  ・家庭内に争いごと20%
と、「ただなんとなく」が最下位なりうるわけで、”不満のすべてが明確ということはないなずだから「ただなんとなく」は大半のひとが解答しているはずで、実質的な不満理由1位じゃないよね、たぶん”なんていう著者とは全く逆の結論も簡単に導ける。
こんな感じで、データなんてこんなに簡単に都合よく解釈できるぞ、と批判対象がとってる恣意的な手法を自らも用いてみせているいるんでしょうね。(しかも、「だいじょうぶですか?このくらいの論理には、ついてきてくださいよ」とわざわざ書いて、暗に自分の論理展開への疑念を封じる手法まで再現しているあたりが上手すぎる)

8/02/2008

【本】神の名前—王国記7 花村萬月

芥川賞受賞の「ゲルマニウムの夜」からつづく王国記シリーズの第8作です(王国記というタイトルは2作目からなので、8作目だけど王国記7になります。文庫版は1作目から王国記となっているので作数と番号が一致してます。ややこしい。)

原始教団が成立した前作あたりから主人公の世代交代がゆるやかにはじまったかな、とおもわせるものがありましたが、ここにきて急激に初期の人物たちがフェードアウトしています。
初期の人物たちの行動原理は、神という存在に対する疑念や対抗心といったものを軸に動いてきたように思います。そういう対抗すべき存在が明確にいるから、彼らがとるべき行動も、暴力や権力といった明確な”カタイ”方向へと流れていっていました。神への対抗という原理は、本来はより個人的な嗜好や信念をより大きな概念へと転嫁することで正当化するということなんでしょう。そうした変換を経ないことには正当化が困難で、だからこそ非常に思弁的で理屈っぽい。しかし、神という対抗軸を設定してしまったことで、かえって神の存在から抜け出られなくなっていた世代のように思います。

一方で、新世代の主人公たちは、個人的な嗜好や信念、悩みを無理に一般かすることはなくて、あくまでパーソナルな問題として捉えている。だから、神への対抗を必要とせず、したがって神の存在を前提としなくともやっていけている。だから、そこで行使される力は、非常に不安定な神秘的な力であり、コミュニティーとしての緩やかなつながりであったりと、より”やわらか”な方向性をもっている。

というような感じで、だいぶ全体の雰囲気も変わってきたのですが、個人的にはやはり初期の人物たちがこのまま簡単にフェードアウトするようには思えないし、新しい世代の人物たちの紐帯もこのまま順調にはいかずやがてはほころびだしそうな印象をうけます。

いよいよ本格的に新しい話が動き出した感じですが、これからどういう方向にいくのかまだまだ見えてきません.次回作がどのようになるのか楽しみです。



【本】コンサルタントの「質問力」 野口吉昭

内容の多くは、他のコンサルタント本と同じく、仮説思考、ゼロベース思考、フレームワーク思考、ロジックツリーなどなどおなじみの概念の紹介です。ただ、それを「質問力」という切り口からまとめたのは結構おもしろい。

上記の概念は言ってみれば頭の内側で完結するツールなんですが、「質問」という概念を導入することで、もうすこし外部とのつながりが意識化されます。そうすると、内側で完結スキルだけで十分ではなく、外部との関わりにかかるつながりも大事だということがわかります。これは本当なら当たり前すぎることなんですが、多くのコンサルタント本はその点に触れていない。触れていないのは触れる必要がないくらい当たり前だからでしょうが、案外読む側はそこを忘れてしまいがちになんじゃないでしょうか。やたらとロジックを振りかざす人はちょこちょこ見かけますね。

そういう意味で、外側との関わりを強く意識させる点はこの本のすばらしいところだと思います。ただ、その外との関わり方について、明確に概念化、構造化でできていないため、どこまでも”そういう面にも気をつけようね”という心持ちのレベルを抜け出ていないのも事実です。多くの場合は、外との関わりが大事だとういうことはわかっているし気をつけているけどなかなかうまくいかないという状態だと思うので、そういう人に”気をつけようね”といってもあまり意味がない。そこから一歩先にすすんで、どんな概念ツールがあって、どんな思考をしたら気をつけられるか、というところまで書いてくれるととても役にたつとおもうのですが。

8/01/2008

過去問 19年 事例2

【今日の勉強】
○中小企業診断士
過去問 19年 事例2
Total 1.75H

TACの解答解説は、かなり苦肉の策だなあという印象。解説として、試験員の著作をなんども引用してきているところからもよくわかります。本文と問題文だけでは解答例をうまく説明できないから、著作からも解答の妥当性を補強せざるをえない、というところでしょうか。
あと、第4問設問2は、本文中のまちづくり三法改正にこだわりすぎて、ほとんど問題文の趣旨を逸脱してしまっていると思うし、なにより解答例のような切り口で実際に解答できる受験生がどれだけいるか疑問です。たとえどんなに正解に近くても、実戦でひねり出せそうにない解答例(と解説)では、あまり参考にならないんじゃないでしょうか。すくなくとも現実的にひねり出せそうな形での別解なりをしめしてほしいものです。このあたりは、「ふぞろいな合格答案」の再現答案のほうが現実的なものが多いように思います。さすが実戦をくぐり抜けてきた人たち!
ただ、これらの再現答案も、他の設問の解答とかなりかぶる面があるのですが、その説明がほとんどない。このくらいの重複であれば通常許容されるものなのか、今回の事例2の性質上重複せざるを得なくなったのか。言い方を変えれば、どんな強度でその解答を選択したのか。
そういう力加減こそ、合格者の方から聞きたいところですね。システマティックな分析は受験予備校に任せるとして、実戦をくぐった人の感触・感覚といった定量化構造化のしにくい微妙なところをこそ、伝えてほしいものです。