6/13/2009

【本】芸術起業論 村上隆

★★★★☆

これはすごい。西洋芸術の文脈を徹底的に読解し、それにあわせて自らのアートを用意周到にマネジメントしている。それを、ここまで隠さず開示してしまっていいんだろうか、というくらいにはっきりと見せている。これだけはっきりした姿勢を打ち出せば、当然、賛も否もあると思う。

何百年も前から積み重ねられてきた西洋芸術の世界では、ガチガチに固められた文脈の中でのゲームのルールがあって、それに従っていないものは見向きもされない。常に文脈の先端を行くことが要求される。先端に行ったとしてもそれはすぐに文脈の中に回収されて同質化され価値を失う。だから、常に同質化から逃れるように先端を走り続けないといけない。

そういう、絶え間ない差異化と差異の回収による同質化というのは、見方によっては市場経済によく似ている。その中で、西洋芸術の文脈という市場を徹底的に読み解き周到にマーケティングすることで、作品=商品をマネジメントしていくというのは、まさに起業そのものだと思う。「芸術企業論」てどういうことだろう、と思ったけれども、読んでみればとても的を射たタイトルなんだなってことがわかる。

そういう視点でいくと、作品だけでなくて作品をマネジメントするという活動の全体が芸術活動なんだな、と感じるけれど、それはあくまで外から見た場合の話だけかもしれない。村上隆としてはそうしたマネジメントはあくまで作品のための道具・手段なんだろう。だから、芸術企業論というのは、芸術=起業ではなくて、芸術のための起業、であって、起業そのものは関心の中心ではないんだろう。起業とかマネジメントとかそれ自体を中心テーマとして展開する芸術的な活動ってのはないんだろうか、とふと思った。

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