5/31/2009

【本】企業戦略論【中】事業戦略編 競争優位の構築と持続 ジェイ・B・バーニー

★★★☆☆

中巻では、既存の業界やドメインでの企業の戦略を分析してる。上巻ではあまり存在感を見せなかったRBVをふんだんに援用していて、経営資源やケイパビリティが企業の行動や優位性にどう影響していくかがよくわかる。RBVだけに依拠するのではなくてそれ以外のパースペクティブも必要とあればしっかり説明していて、必要な知識を提供するという教科書としての役割を果たしている。

とくに、垂直統合の章では、新制度派経済学の取引コスト理論にもかなりの紙幅を割いている。日本の戦略論のテキストに新制度派経済学の話がここまで出ることはほとんどない。あっても、ごく触れる程度だったりする。こうやって、経済学と経営学がしっかりと繋がっているのはやっぱりアメリカのビジネススクールの強いところだなと思う。

TOEIC受けた

数年ぶりのTOEIC受験。それなりにいけるんじゃないかと、たかをくくってたら、意外と苦戦してしまいました。リスニングは勘に近かったし、リーディングなんて最後まで解ききれなかった。毎日英語のポッドキャスト聞いてるしUSCPAの問題も解いているんだから、もう少し善戦できると思っていたのが甘かった。

長文であれば全体の意味からぼんやり解答を選ぶことができるのだけど、短文穴埋めなんかはピンポイントで正解を求められるからもうお手上げ。とくに、文法や単語の知識が必要な箇所はかなり苦しかった。このあたりは、いまの勉強法では確かに身に付けにくいところだなあ、と実感。勉強法の不備に気付けたのはいい収穫です。

5/30/2009

【舞台】ザナドゥ

★★★★☆

赤坂ACTシアターにて。

重厚で豪華絢爛な系統派なミュージカルを予想していたら、おもいがけず軽くてチープ。といっても、期待はずれというわけじゃなくて、80年代の軽薄な雰囲気と良くあっていて楽しく見れました。短パンバンダナの男、ムチムチブロンドの女神、とりあえず白い服着させておけばいいやという天井の神々、どれもしょうもない感じがかえって楽しげ。クライマックスのオチまで、それでいいのか!というチープさで爆笑。そういう軽さでつぎつぎたたみかけていって1時間半があっという間でした。

ちなみに、日本語字幕はなぜかクリス松村電。これが実際の台詞にくらべて圧倒的に少ない。たぶん半分か3分の1程度だったかもしれない。ただまあ、ミュージカルは台詞と踊りと歌とを全部ひっくるめてのものだから、字幕を読むのに気が行き過ぎても本末転倒。台詞のひとつひとつを理解するにはぜんぜん足りないけど、ミュージカルを楽しむならこれくらいにおおざっぱなくらいでいいのかもしれない。

【本】企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続 ジェイ・B・バーニー

★★★☆☆

リソース・ベースト・ビュー(RBV)の第一人者による経営学の教科書。RBVの大家とは言っても、全編をRBVで貫いているわけではなくて、RBV以外の理論もしっかりと説明しているから、偏った記述にはなっていなくてとてもバランスがいい。

上の基本編では、戦略の定義やSWOT分析など戦略論の基本中の基本が説明されている。実例の紹介がかなり多くて詳細。分量的にはかなり多いけれど、理論的な明解さがあるので、すいすい読めて理解できる。

RBVに基づいた理論については、第5章の強み弱み分析で少し出てくるくらいで上巻ではあまり出てこない。書きぶりからすると中巻以降の各論でRBVを基礎にした分析が行われるようなので、ポーターあたりとどんな違いが出てくるのか興味深い。

5/29/2009

【本】恋文の技術 森見登美彦

★★★★☆

本当にしょうもないことをしょうもないくらいおおごとに書くのが本当にうまい、おもしろい。今作もやっぱり、あー、学生時代ってこんな感じだったなー、と懐かしさと痛さがずんずんきました。

「夜は短し〜」とかとくらべたら地味で奇想天外な感じも薄い。森見登見彦の作品をファンタジーとしてみたらかなり物足りない。でも、主人公たちの痛さダメさヘタレさは健在で、それを大仰な文体で照れ隠し半分に糊塗する感じはいつも通り。「太陽の塔」と似てるところがあるかも。個人的には、森見登美彦はファンタジーとかじゃなくて、けっこうリアルな青春物語だと思うので、そういう所が盛りだくさんな今作はかなり楽しめました。

5/27/2009

【本】組織の経済学 ポール・ミルグロム/ジョン・ロバーツ

★★★★★

経済学部に在籍しながらほとんど近代経済学を勉強しなかった学生時代だったけど、唯一おもしろいと思ったのがコースの定理でした。資産効果や取引費用がなければ当事者間の交渉で必ず効率的な実現すると言う定理を聞いて、経済学ってこんなにシンプルでエレガントな理論を導けるものなんだと感心した記憶がある。

そのとき授業で使っていたのがこの教科書。当時はミクロの基礎も知らず、さらに600ページ超の分厚さに尻込みして結局買わずじまいだった。今回ようやく一念発起して読んでみた。

学生のころよりはいくらか経済学の知識はあがっているつもりだけど、読み進むのはなかなかな難しい。注意深く読み進めないと論点の把握が少し難しいところがあって、ちょっと気を抜くていまどこで何をしているのか分からなくなる。数式なんかも出てくるので、そんなときは紙とペンを用意して手を動かしてみないと理解しにくいところもある。

でも、そうした難しさは論理的な厳密さを考えたら当然のことだし、かなり踏み込んだところまで説明しようとしているから無理もないことだと思う。それに、当時としては新制度派の中でもまだ定式化されていない最先端の理論も盛り込んでいたようだから、そういう部分はまだ整理され尽くしてなかったのかもしれない。

そうして苦労して読み進んで得るものは、やっぱり予想通りに大きいものがあります。単に市場に任せるわけでも中央集権化した管理体制で運営するわけでもなく、その両者のあいだのグラデーションの中で、どのように資源配分を効率化するコーディネーションを実現するか、そうしたコーディネーションが適切に行われる制度設計をどうするか、ということに関するヒントが多く見つかります。極めてアカデミックで理論的な話ではあるけれど、会社の組織構造や人事制度などにそのまま直結する話でもある。

個人的には興味があるのはやっぱり取引コスト理論(本書では取引コストの議論はすくないのだけど)。企業間の関係を取引コスト理論を使って分析してみたい。企業と企業の間にはどんな取引コストが生じて、それがM&Aやグループ再編でどう変化するのか、そういうことがわかれば、最適な企業間関係をあぶり出せるかもしれない。

友人との飲み

友人と飲みに行きました。
10年来の知り合いで、今でも連絡を取り合っている数少ない友人の一人。

彼女は会社のグチをよく言う。
会社の制度、上司・同僚、今の仕事、およそ会社かかわる大半のことに対して不満を持っている。

でも、グチは言っても腐ってない。不満を所与として諦めてない。

それに、会社に不満をもつのと同じくらい、自分に不満を持ってる。会社への不満も自分への不満も理想とのギャップだけど、それを埋めるためには何をすべきか、いつも考えてる。常に試行錯誤していて、会うたびに成長している。

彼女のそういうところはいつも感心させられる。僕自身はついつい目の前の業務を片付けることに関心がいってしまうから、彼女の問題意識の高さに触れると本当にいい刺激になる。

5/26/2009

新プロジェクト

新プロジェクトへの参加が決まりました。

プロジェクト参加社の社内公募があって、手をあげようかどうしようかと思案していたところ、部門会議で指名されたから参加するようにとの話がやってきました。

ターゲット業界について、動向分析や商品開発をするというプロジェクトとのこと。ターゲットの業界は入社してからずっと携わってきた業界で、今までの知識が役立てられるんじゃないかと思う。これだけ長く関与してきた社員はあまりいないはずだから、経験にはそれなりの自負もある。

ただ、実のところ、この業界に詳しいといっても入社時からの割当の関係でたまたま長く関与しているだけで、そんなに興味があるわけでもないのが残念なところ。他の業界にも関わってみたいという想いもある。

とはいえ、選ばれたからには期待に応えていい成果を出せるようにがんばりたい。

5/24/2009

【本】世界一わかりやすいプロジェクト・マネジメント ベーカー/キャンベル/ベーカー

★★★☆☆

プロジェクトマネジメントを一通りしっかり押さえるための、とりあえずの一冊としてはとてもいいと思う。説明が少しくどくて分量が多いのだけど、そのぶんひとつひとつ丁寧に解説してくれている。コラムもなかなかおもしろいからあまり飽きないし。



【メモ】
プロジェクト成功の12の黄金律
1.成果物について合意を得る
2.最良のチームを育てる
3.しっかりしたプロジェクト計画書を作り、更新を怠らない
4.本当に必要な資源を判断する
5.現実的なスケジュールを作る
6.できる以上のことはやらない
7.常に人を大切にする
8.正式な支援を取り付け、継続して確認する
9.変更を躊躇しない
10.現状を周知する
11.新しいことに挑戦する
12.リーダーとなる

プロジェクト目標の6つの要素
1.具体的である
2.現実的である
3.期限が区切られている
4.測定できる
5.合意がとれている
6.目標達成の責任所在が明確である

Think!

”仕事のスキルアップ、キャリアアップを目指すビジネスプロフェッショナルのための実践的ビジネストレーニング誌”なる「Think! 29号」を読んでみました。……が、これ、ほとんど全ページ広告なんだね。

スキルアップ系の本を出してる人や、研修やコンサルをしてる人が自分の商品の一部を披露しているのをいくつも列挙した作りになってる。詳細は、本を買うか、研修受けてねというところ。いまの流行のスキルアップ術を押さえられるし、いろんな人の主張を知れたり、というのはできるけど、あくまでも商品紹介だってことは割り引く必要はありそう。

ただ、竹中平蔵さんの「プロフェッショナルのためのマトリクス勉強法:上級編」だけは、他のスキルアップ術を仕事の種にしている人とはひと味違った読み応えのある記事でした。これも「竹中式マトリクス勉強法」の販促記事なんだろうけど、それほど商売っけがない。そして、それ以上に文章の鋭さが違う。これにくらべたら、他の記事は生温く感じてしまう。やっぱり、最先端を走ってきた人というのは生半可な思考ではないんだな、ということを実感です。

【映画】長い散歩

★★★☆☆

2時間13分はさすがに長過ぎるなー。
2時間以上かけた割には、自殺した松田翔太や少女の母親役の高岡早紀の描写が少ないし、なにより緒形拳の過去への言及が足りない。もっとそのあたりを丁寧に描写しないと、彼らの行動が理解できないし、感情移入も難しいんじゃないかな。それか、いっそ周りの描写は削って緒形拳と少女の旅だけをクローズアップした90分くらいの作品にするとか。長い時間をかけて、さまざまな視点を導入したのに、それがうまく繋がらなかったのは残念でした。

緒形拳は画面にいるだけで迫力があったし、すごく惹かれるシーンなんかもあったんで、もう一歩練り込まれていればすごくいい映画になったかもしれない。

5/23/2009

演劇集団キャラメルボックス「容疑者xの献身」

★★★★☆

キャラメルボックスのスプリングツアーは東野圭吾の「容疑者xの献身」。

原作は、良くも悪くも”超”よくできた二時間ドラマみたいなものなので、キャラメルボックスポくない。でも実際観てみると、話の筋は原作そのままなのに、ちゃんとキャラメルボックスのお芝居になっててとても面白く観れた。

殺人を犯してしまった母娘を救うために天才数学者が奔走するというシリアスなストーリーなのに、笑いをいれて肩が凝らないようにバランスをとっています。それでいて、シリアスさは失わなくて、結末を知っていてもやっぱり引き込まれる。

あと、客演の刑事役がとても良い感じを出していてよかった。キャラメルボックスの芝居にしっかりとけ込んでいるけれど、やはりキャラメルボックスの役者さんにはない雰囲気を持っていて新鮮さもある。
キャラメルボックスは、脚本も演出も役者もとても真面目で誠実なんだけど、そのかわりにフォーマットが固まりきってしまってそこからの逸脱がないから驚きや新鮮さがない。それはそれで安定感があるのだけど予定調和でもある。だから、こういう客演でキャラメルボックスにはないものを取り込むとまたいつもとちがった新鮮さが出るなと。

5/20/2009

【映画】ハゲタカ

★★★★☆

映画版ハゲタカの試写会に行ってきました。

ドラマが本当に面白かったので、映画でもうまくのかなと心配していたのだけど、じゅうぶん楽しめる内容でした。ドラマの雰囲気を壊さないでシこういう経済モノをしっかりと作れる

ただ、映画の新キャラクターが多く活躍した割に、ドラマから引き続いて登場する人物の出番が少なかったのは少し残念。特に、ドラマでは主役級だった柴田恭平の活躍の場があまりない。ドラマの大森南朋の立ち位置に玉山鉄二が、柴田恭平の立ち位置に大森南朋がスライドしたせいで、柴田恭平の立場が不明確になってしまったんだろうと思う。他の継続して登場する人物も顔見せという感じ。

でもまあ、玉山鉄二と大森南朋とのハゲタカ同士の対決、というエピソードとしてはおもしろいし、両方の頭脳戦もよくできてる。こういう経済モノの映画はないし、これだけのできのものはもっと少ないように思うから、なかなか満足でした。

5/17/2009

【映画】スラムドッグ$ミリオネア&消されたヘッドライン

○スラムドッグ$ミリオネア

★★★★★

おもしろい。そしてうまい。これはアカデミー賞とってもだれも文句言えない。

ミリオネアを通して一人の男の人生を描ききってしまってる。ただの男の人生というだけでなくて、インドという国の現実でもあるし、純愛ストーリーでもある。いろいろなものを盛り込みながら、それぞれが全く薄まっていないし、そういう盛りだくさんな感じがまたインドのイメージとぴったり合う。

スピード感のある演出とか、かっこいい音楽とか、「トレインスポッティング」を思い出すところもあるけれど、それよりもっともっと進化して洗練されていると思う。ダニー・ボイルは「トレインスポッティング」以来あまりいい感じがしなかったけど、久々におもしろい映画だった。


○消されたヘッドライン

★★★☆☆

試写会に当選。

脚本のせいだろうけれど、全般的に人物描写が弱くてキャラクターが活かせてない。内面の掘り下げがないから未略に欠けている。本当ならもっと大切な役回りのはずの女性二人が特にもったいなかった。

気付いただけでも2、3シーンはカットされていたから、本来はそのへんで人物描写を描き込んでいたのかもしれない。もっと脚本を練って、台詞のせりふひとつひとつ行動のひとつひとつに気を配ってさえいれば、もっとコンパクトな中に人物を描き込むこともできたんじゃないかと思う。

ただ、話の筋はおもしろいし、演出も丁寧なので見飽きない。次はどうなるんだろうと見入ってしまう。脚本の練り込み不足はもったいないけれど、まあまあ

それにしても、この手のサスペンスものってそんなに予算のかかるものでもないのに、日本ではなかなか作れないのはなぜなんだろう。男の意地とか家族の愛とか、なぜか人情ものになってしまうものが多いように思う。

5/14/2009

【本】組織の経済学入門—新制度派経済学アプローチ 菊澤研宗

★★★★★

ミルグロム&ロバーツの「組織の経済学」の予習として読む。

組織間や組織内部での行動を経済学的に分析する新制度学派の入門テキスト。取引コスト理論、プリンシパル=エージェント理論、所有権理論の3つの柱をそれぞれしっかり説明しているし、進化経済学、行動経済学、ゲーム理論などのアプローチも簡単に紹介されていて、これ一冊で組織の経済学のだいたいの概観はつかめるんじゃないかと思う。

数式をほとんど使わないかわりに文章による説明がていねいで、とてもわかりやすい。大事な前提条件は何度も説明してくれるので、前のページに戻って条件を確認して、ということをしなくてもすらすら読んでいける(少ししつこい気もするけれど)。

そしてなにより、この分野はやっぱりとても面白い。一般的な経済学ではブラックボックスとして扱われてしまって、一方の経営学ではきちんとしたモデル化がされず記述的なままの”組織”というものが、こんなに首尾一貫したモデルとして分析できるというのは本当に興味深い。

ただ、入門というだけあって、読み進んでいくうちに疑問が出てくるし、その疑問に答えてくれない部分も多い。そのあたりは、もっと深く勉強しないと行けないということなんだろう。

5/09/2009

【本】ミクロ経済学 戦略的アプローチ 梶井厚志/松井彰彦

★★★★☆

ゲーム理論をベースにミクロ経済学の入門教科書を構築しようという意欲的な構成の教科書になっている。普通のミクロの教科書であれば、完全競争下での価格理論から始まって、独占、寡占ときて、ようやくゲーム理論が紹介される。これを完全にひっくり返して、ゲーム理論で寡占や独占を考察してから、一般的な価格理論に向かおうというのがこの教科書。

あまりに一般的なミクロの教科書とは違っていて多少の戸惑いはあったけれど、読み進めてみれば確かにこのアプローチはありかも、と思える。

価格理論で最初に出てくる完全競争下のプライステイカーという考え方は、あまりにも現実の状況からかけ離れているように思えるから、初めてミクロ経済学を学ぶ人にはイメージがしにくい。それよりは、お互いの出方を考慮しながら行動を決定するゲーム理論の方が取っ付きやすいかもしれない。それに、ゲーム理論はいまではほとんどミクロ経済学の必須概念になっている割に、価格理論に時間をかけすぎてゲーム理論はおまけ程度で教えている教科書や授業が少なくない。それならいっそ、ゲーム理論から教えてしまうというやり方も悪くないと思う。

もちろん、従来型の価格理論を始めにやってゲーム理論に移る教科書もやはり一定の意義があるとし、その方が理解しやすい部分もある。だから、従来型の教科書と併用して補完しながら理解していくのが賢い使い方のように思う。

5/08/2009

【本】 クルーグマンマクロ経済学 ポール・クルーグマン

★★★★☆

シンプルな基礎付けから、マクロ経済学の体系を説明しているのがとてもすばらしい。経済学の教科書は、いろいろな条件を設定しているわりにどうしてそういう条件が必要なのかという説明が少なくてしっくりこないものが多い。それに対して、この教科書では、そもそも設定される条件が必要最低限に押さえられている上に、その条件の背景をとても詳しく説明してくれている。

そうして押さえたシンプルな基礎付けを出発点としてマクロの体系が説明されているから、全体の説明が一貫していて複雑な経済の動きがとてもすっきりとした形でイメージできる。このシンプルさはマクロ経済学を学ぶうえではとても効果的なことだと思う。

そして、新しい概念や考え方が紹介されるたびに、対応する実例も紹介してくれている。このおかげで、概念が現実の経済でどう適用されるのかがよくわかるし、概念を理解するのに手助けになる。実例以外にも、理解を助けるさまざまな説明が施されている。そのため600ページ超の大部な教科書になっているけれど、自分なりに取捨選択すれば読み切ることはそれほど苦ではないと思う。

それに、アカデミックエンターテインメントというだけあって、読んでいて単純におもしろい。こんなふうに現実の経済が動いているんだ、という驚きながら読みすすめられる。だから、ただ学部生の入門というだけでなく、社会人が経済を理解するための入門にもとてもいいと思う。

【メモ】
経済学の9つの基本的な原理
(個人の意思決定に関わる原理)
1.資源は稀少だ
2.機械費用:何かの本当の費用はそれを得るためにあなたがあきらめなければならないもののことだ
3.「どれだけか」は限界での意思決定
4.人々は自分の暮らしを良くする機会を見逃さない
(個人の決定が相互に作用する仕方に関わる原理)
5.取引は利益をもたらす
6.市場は均衡に向かう
7.社会的目標を達成するため、資源はできるだけ効率的に用いられなければならない
8.市場は通常は効率を達成する
9.四条が効率性を達成しない場合には、政府の介入が社会的構成を高める可能性がある

現代マクロ経済学の合意
1.拡張的金融政策は不況の克服に有効か 特別な状況をのぞきYES
2.財政政策は不況の克服に有効か YES
3.金融ないし財政政策は長期の失業削減に有効か NO
4.財政政策は裁量的に運用すべきものか 特別の状況をのぞきNO
5.金融政策は裁量的に運用すべきものか 論争中

5/06/2009

【本】入門マクロ経済学 中谷巌

★★☆☆☆
試験勉強には役に立つかも。


一昔前ならマクロ経済学の超定番テキストの地位にいただけあって、全方位的にはずしのない構成。国民経済計算から、財・サービス市場、貨幣市場を経てIS-ML分析を紹介、さらに労働市場を加えてAD-AS分析にたどり着く。そのあとは、財政政策、金融政策、国際貿易、国際収支なんて論点をみていくという流れは、まさに日本の標準的なマクロ経済学。ひとつひとつの内容も、細かいところまで網羅しているし、それぞれ数式での説明もあるから、とりあえず資格試験に必要な論点はまんべんなくカバーしている。

でも、一方で、盛りだくさんに詰め込みすぎているきらいはある。前書きには”本書は経済学部の専門課程の学生、あるいは大急ぎでマクロ経済学の体系をマスターしたいと考える大学院生、公務員試験の準備のためにマクロ経済学を勉強している方々、世界経済の動向や金融市場に関心のあるビジネスマンや官僚の皆さん、ビジネススクールなどで経済学の基礎をしっかり勉強したいと考えておられる大学院生などを対象としています。”とある。つまり、学生、資格試験生、ビジネスマンまでほとんどあらゆる読者を対象に書かれている。でも、学生は考え方を、受験生は問題の解き方を、ビジネスマンは現実経済の動向を、それぞれ知りたいはずで、すべて盛り込もうとすればかなり煩雑にならざるを得ない。その結果、どの読者も不必要な部分が多い構成になってしまっているし、中途半端になっているように思う。

内容的に幅広く網羅されているので資格や試験勉強用にはいいけれど、概念の理解したりや現実経済の動向を知りたいのなら、別の教科書のほうが面白いし役に立つと思う。

5/05/2009

09年4月まとめ

【勉強】
○USCPA 15.75H
FAR、AUD、BECをノートのまとめる。5月からは問題集を中心に。

○英語 12.3H
主に通勤中のPodcast。あまり根を詰めてやっても長続きしないからこれくらい緩い方がいいかも。
5月にTOEIC受けるから、リーディングもやらないと。

【本】
ソウルフルな経済学―格闘する最新経済学が1冊でわかる ダイアン・コイル ……5点
人は意外に合理的 新しい経済学で日常生活を読み解く ティム・ハーフォード ……3点
予想どおりに不合理—行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 ダン・アリエリー ……3点
読書について 他二篇 ショウペンハウエル ……4点
本を読む本 アドラー/ドーレン ……3点
多読術 松岡正剛 ……5点
入門!論理学 野矢茂樹 ……3点

【マンガ】
鋼の錬金術師 22 荒川弘 ……3点

【映画】
西の魔女が死んだ ……3点
ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還 スペシャル・エクステンデッド・エディション ……4点
GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0 ……2点
・鴨川ホルモー ……3点
ダークナイト ……4点

【舞台・美術館とか】
・シルク・ドゥ・ソレイユ「コルテオ」 ……5点
・やなぎみわ「マイ・グランド・マザーズ」 東京都写真美術館 ……2点
・夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史 Ⅱ.中部・近畿・中国地方編 東京都写真美術館 ……3点
・音楽劇「三文オペラ」 Bunkamuraシアターコクーン ……3点

5/01/2009

【本】マクロ経済学 伊藤元重

★★★★☆

こんなにわかりやすいのか、と再読してみて驚いた。大学で最初に読んでいたら、経済学への苦手意識もそんなになかったんだろうに。

国民経済計算から始まって、IS-ML分析、AD-AS分析、さらに財政政策、貿易、などと、日本の標準的な教科書の構成だけど、それぞれ現実の日本の実情と照らし合わせて説明するからとてもイメージしやすい。数式もほとんどつかわず文章で説明しているのも、取っ付きやすさのひとつだと思う。

基本的な概念の説明に重点を置いているぶん盛り込まれている内容は初級としても不十分だし、数式を使わないことでかえって抽象的なモデルが見えにくい。こういうところは他のテキストで補完する必要がある。とはいえ、取っ付きにくい経済学の概念を大きなくくりで掴むための最初の一歩としては、このくらいがちょうどいいように思う。